2025年2月。敬愛する友人と旅を共有できる、という理由で旅に出た。
有り難いことに、以前にも「え、じゃあ一緒に泊まる?」と、まるでご飯を食べるぐらいに気軽に誘ってくれていたことがあって、私なんぞがご一緒しても良いの?という勿体なさと、その時はヨーロッパだったので予算も時間も無くて泣く泣く断念したのだが、今回はマニラ。以前のお誘いに乗れなかったことを後悔していたのもあって、え、い、行きたい!
調べてみると、日本円が弱弱しくなって久しい今でもリーズナブルな値段で気軽に行ける場所。
それなのに私の狭い人生には全くノーマークの場所だったので、世界史で学んだことぐらいしか頭に残っていない。
訪れる国について予習しない状態には以前のタイへの旅行でかなり後悔したので、今回はタガログ語を少し学び、フィリピンが舞台の日本語の小説を読むぐらいのことはしてみた。逆に、タイについては少しだけ知ってるという奢りがあったのかもしれない。そのぐらいタイの文化については日本で特段意識せずに暮らしていても触れることができる身近さがある。
けれど日本から4-5時間で行けるフィリピンについて、私は本当に何も知らなかった。どんな食べ物を食べるのか、どんな色使いが好まれていて、どんなものを作り出す人たちなのか。
たかが5日の滞在でそれをすべて感じられたとは全く思っていないけれど、素敵な人が一緒だったおかげで200%濃厚で豊かな体験をすることができた。
そもそもタガログ語をやってみよう、と思ったのも彼女のおかげだ。
マルチリンガルな彼女の思想に触れる前から、若い頃と違って今は言語習得に最強な時代なのではないかとは思っていた。
英語はもちろん、どんな言葉も簡単にネイティブの発音に触れて学ぶことが出来る。インターネットの集合知の花が開いたような状況で、こんな豊かな知識の海をAIだけに泳がせておくのは勿体ないなあとは思っていた。
しかし私は泳ぎ方を知らなかったのだな、と彼女に会って分かった。
ある国を初めて訪れる前にその国の言葉を学ぶのだ、と言って、数ヶ月の短い学習期間だけで、昨年の春の台湾で、見事に中国語を操る彼女の姿に衝撃を受けた。
恥ずかしながら一応、中国語は私の第二外国語である。大学の研究で20代で中国の奥地にまで行って現地の子らから中国語を習った懐かしい思い出まである。それなのに、簡単な挨拶さえ覚束ない。四声まではまだ良い。日本文化の根源の1つである中国語を学ぶのは知識としては楽しい体験だった。さらに大学の研究室には中国北部からの留学生が二人も居て学ぶ環境として最強だった。
だが「日本人」のRiの発音を何度も教えて貰っても上手く出来ず、舌が攣りそうになって諦めた。最近になって北部のRは中国語の中でもはっきり発音が求められる方なのだと知ったのだが、20年以上前の素人にそんな情報は得られなかった。海外に行きたい欲もそんなになかった私にとっては外国語なんてそんなものだと思っていた。会話が出来るレベルになる人にはそれなりの才能と理由と時間が必要で、私にはそれが無いのだと。
彼女に一体どうやって学んでいるのか尋ねるとPimsleurを教えてくれた。多言語オタクには常識の語学学習アプリだそうだ。毎日30分、知識ゼロでも音だけから学習し、旅行ぐらいであれば問題ないレベルの会話力を習得できるというメソッド。子供が耳と口だけで言葉を覚えていく仕組みに着目し、知識が定着しやすいタイミングでリキャップするように構成されている。
それはやったことがないし、理屈としてすごく納得したので、聞いたその場でダウンロードして始めてみた。英語で習うので英語のヒアリング練習にもなるし、英語の質問から別言語を考えるのも、頭の体操感が凄くていい。毎日30分の確保が下手だけれど、別に仕事じゃない、気楽な趣味なので出来る時に出来るだけ。
認識すると、有名なマルチリンガルYoutuberもPimsleurが良いと言っているのを見たりして、知る人ぞ知るものなんだなと分かった。かなり昔からあるのでテープとかCDの時代の教材で学んだことがあるという人もいた。残念ながら日本語→英語は知った当初にはアプリになかったのだが、実は日本の企業が買い取っていたそうで、今は日本語→英語コースもアプリに入っている。
そもそも結構前からDuolingoではつまみ食い程度に色んな言語を遊んでいるのだが、これにPimsleurをかけ合わせてみている。
去年ぐらいから日本語が堪能なブラジル人女性と仕事で一緒なので、全く知識ゼロの言語をやってみようとポルトガル語を始めてみたら、今まで経験したことがないほどにするっと入ってきて驚いた。そして、ネイティブにたまに聞いてもらって褒めてもらうのもめちゃくちゃ大事かもしれない。といっても自己紹介ぐらいしかまだ出来ないけれど。
さて。とはいえ、マニラ行きを決めたのは、年末だったので1ヶ月ちょっとしかない。どこまで行けるかなあ、と思いつつダメ元で、途切れ途切れにPimsleurだけでやってみた。タガログ語は残念ながらDuolingoには無いのである。相性みたいなものがあるのか、1回では全然入ってくれず挨拶すら駄目かもと思っていたのだが、何度も同じレッスンを聞くこともあるよ、と既に2周目だという彼女の話に勇気をもらって、最後の数日間ぐらい集中して再度トライしたら幾つか入ってきてくれた。ほんのすこし。Kaunti.
言葉が入ってくる、という体感もPimsleurならではかもしれない。ほかでもあるかも知れないのだが、私には始めての感覚だった。言葉を習得する、という感覚。英語についてはずうっと「やらされ」すぎていて、おそらくインプットを間違えまくっているので、こんな感覚を得た記憶がない。あと、Duolingoは視覚が邪魔をする気がするのでもっと音だけのコンテンツがあると良いのではと思っている。
もちろん、全然足らないのだけれどやらないよりは良いかなぐらいの、ゆるい姿勢なのであんまり褒められたものでも無いのだが、体験としてだけでも楽しいのでPimsleur仲間を増やせたら嬉しい。
さて。これは旅行記のつもりで書き始めたのだった。前置きにしては長すぎてしまった。
次の記事でマニラへの旅に話を戻そう。
写真はホテルに隣接した大きなモールで見つけたカラフルなバッグ。一晩悩んで、2つ買ってしまった。