WordCamp Asia 2024 のオーガナイザーをやってみた


English Version is here.

終わってみればとても楽しかった!チームはもちろん、街で出会った人も優しくて台湾が大好きになりましたし、WordPressのコミュニティの希望も見つけられた素敵な出会いがたくさんありました。

やはり人が面白くて、出会いが素晴らしい。

相変わらず長いので覚悟あそばせ。

どうしてオーガナイザー(実行委員)をやったのか

私のブログを長くご覧いただいている超少数のフォロワーさんはご存知かもしれませんが、私のオーガナイザー歴は2021年のWordCamp Japanのコントリビューターデイ班でおしまいかなと思っていました。

体力的にもモチベーションとしても続ける理由が見つけられなかった、というか、まあもう私は引退かなあという気分ですっかりおりました。もう十二分にWordPressによって受けた恩恵は返した気分、といいますか。そもそも、ここのところWordPressの案件をほとんどやってないから、というのもあります。

WordPressそのものを作る側の作業にコミットすることには継続して興味があるのですが、WordCampというイベントにはもうあんまり興味がないみたいなのです。他のイベントのお手伝いもさせて貰ってみてよくわかったのですが、私はそもそもセッション形式のイベントにそこまで興味が無いようでWordPressかどうかというのはあまり関係無いようです。

増して英語が基本のWordCamp Asiaには参加する考えも及ばなかったのですが、2023年に3年余りの準備期間を経て待望の最初のWordCamp Asiaが開催されての今年、2回目のWordCamp Asiaのオーガナイザーチームはメンバー構成に困っているようでした。今年も継続できる酔狂な(ええ、愛すべき酔狂な)メンバーがあまり居なかった、というのが私の推測ですが、あったようでした。それだけWordCampのオーガナイザーというのは気力と時間を使う役目です。

きっとじっくり多方面からリクルートできたりしたら、無論私より断然最適なメンバーもたくさんいらっしゃると思うのですが、基本的にローカルのWordCamp実行委員経験者であることや、オーガナイザーの役割に時間が割ける余裕があるなどの考慮点もあって、デザインチームのリードである順子さん(@nukaga)からお声がけいただきました。

デザインチームにはWordPressはもとより、デザインについての専門性が求められ、且つ比較的重めのタスクがアレコレあるためメンバー選定に苦労されているようでした。

順子さんはWordPressのコミュニティだけではない、人生そのものの先輩であり恩人であり、彼女の役に立てるなら喜んで、という気持ちであんまり何にも考えずに(なんなら当日行けなくてもいいかと思っていましたし)気がついたら首を立てに振ってしまっていたのですが、ふと冷静になると、あれ、英語のMTGとか無理ゲーじゃん…?順子さん恋しさにとんでもないこと引き受けちゃったな…と思いながら最初のMTGで適当な挨拶をしていました。

オーガナイザーでさえ、そんなにWordPress自体には興味がない?

Asiaという大きな単位でWordCampをやる、という無理ゲーを継続しようとしているやばい面々の中に混じって果たして何ができるのやら、という心持ちでしたが、暫く観察しているとやはりAsiaにも日本と共通の現象があるようでした。

つまり、オーガナイザーの面々もそこまでWordPress自体にあんまり興味がない。私がWordPressとその継続において大事だと思っている部分と違う面を重視している人が多い、というか。それは当然の多様性でありながら、私にとって大事だと思う部分が疎かにされているようで、少し居心地が悪い状態でした。

これは私がWordCampから遠ざかる一つの要因でもあるでしょう。しかしそんな偏った価値観の人間はおそらく私ぐらい。

そもそも他のメンバーはオーガナイザーを自ら希望している訳で、順子さんから頼まれたからというだけの私の邪なモチベーションはいとも簡単に萎んでしまいました。やると決めたからには意地でも完走するのは当然ながら、はてどうやってやる気を出そうか。

重なった幸運とメンバーとの出会い

そこにちょうどよいタイミングで、過分なほどの幸運が重なって、WordCamp USに招待枠で参加できる事になったのはオーガナイザーとしても幸いに繋がりました。初めて直接お会いするAsiaのチームメンバーとFace to Faceでお近づきになることができたのです。

2度目、という難しいタイミングでのWordCamp Asiaの実現に向けて、しかも台湾で開催するという挑戦を成功させるために真剣に取り組んでいる素敵なメンバーを見ているうちに、私が興味があって私にできることでチームに貢献しようという気持ちになりました。

その一つとして、WordCampのサイトであるのだからブロックテーマで作るべきだ、ということについてもう一歩踏み込んでみたいということがありました。デザインチームとしての枠からは外れた活動ではありますが、長期的なWordCampの継続にとって不可欠なことだと感じました。そして私のモチベーションのためにも必要でした。

WordCampはWordPressのお祭りですよね?

そもそも今回の最初のチーム構成にはサイト開発専門のチームが居ませんでした。その事自体も私にとってちょっと不満であり不安な点でした。

もちろん、WordPressでもWordCamp.orgでも、デザイン性やUI・UXを切り捨てれば、特段の専門的な開発作業無しにサイトを構築・運用することは可能です。

簡単に作れるのが、WordPressの良いところ!ですよね!?

…果たして本当にそうでしょうか?

どう見ても、今年のチームはそれ以上のものを目指して動いていました。それ自体は悪いことではなく皆が望むAsiaの規模を考えると当然の帰結のようにも思います。

そのうえで、CSSさえちょろっと書ければ、WordPressなんて簡単につくれる。というような声をオーガナイザーから聞くのは私にとってちょっとつらかった。

私に言わせれば、大規模サイトを一から構築するよりも、断然WordCamp.orgの開発の方がやりたくない作業だと言い切れます。継ぎ足された秘伝のタレのような、レガシーの塊のようなWordCamp.orgは超巨大なマルチサイトであり、尚且つCSSしか書けないという強い制限があります。それも最新のCSSの仕様はすべてクリーンアップされてしまうという哀しいオプション付き。CSS変数すら使えません(Additional CSSには書けます)。さらにその上で、WordCamp.orgこそ最新のWordPressを積極的に使うべきということでしょう、NightlyのWordPressで運用されています。なんというか、狂気の沙汰のような、悪夢のような構成で今日も動いています。

そして最大の問題としてこれらの仕様(というより既成事実)はどこにも公式に明文化されていない(と思っていますがあったらごめんなさい)。Slackのチャンネルを見る限り、毎年世界各地で開催されるたびに悲鳴が上がっているように私には思えます。

そんなめんどくさいサイトに付き合っても、CSSを書くだけだから簡単でしょう、誰にだってできると言われてしまうとしたら、開発者としては触りたくない心地になって然るべきです。

オーガナイザーでさえWordPressというか、サイト開発という作業を軽んじている現状が歯がゆいというか、本質から離れていく一方のコミュニティの現れのように感じ、危機感を覚えました。

本来、WordCamp.orgのサイトを構築・開発・運用する、というのは普段WordPress自体またはプラグインやテーマの開発などに携わっている開発者層にとっては、WordPressを使う側・運用する側に立つ貴重な機会の一つとなるはずです。しかしそんな実態のWordCamp.orgを触れば開発者はコミュニティに失望する一方でしょう。

実際、私がWordCampに興味が薄いのは、WordCamp.orgが辛い実態のまま運用されてしまっていることにも強く関係していると思います。

その問題にコミュニティの開発者は気がついていながらも、手を出す暇が無い状態です。
コントリビューターは世界中に何千といるはずなのですが、いつだって実働部隊は手が足りていません。
WordCampどころか、WordPress.orgのほうも全く手が足りていないのが現状で、優先度として、どうしてもWordCamp.orgは後回しにされてしまっています。

とはいえデザインタスクも山積みです

ということで、WordCamp.orgにテコ入れする、という具体的な目標は決まって、WCUSへの参加で私の中のモチベーションは上がったものの、デザイン班の仕事も待ってはくれません。サイトに手を出したからには半端なことはしたくないものの、そもそもデザインチームの手が足りないからと呼ばれたはず私がそちらをやらない訳にはいきません。…きっと、こうやってWordCamp.org自体のアップデートは後回しになってきたのだろうなと身を持って思っています。

Asia全体のWordCampといえど、やはり開催土地の色を出して欲しいし、そもそも私はWordCamp Asiaの目指すべきものが見えていない人間なので端からサポートメンバーとして自らをカウントしていました。FigmaやGitHubの技術的なところや、細かい作業などのフォローを想定していたのですが、そこはWordCamp、最後はやれる人がやれるときになんでもやって乗り切る状態に。

英語と中国語と日本語の入り交じるデザインチーム

大変だけれど、あの学祭前夜のような状態は実は嫌いではありません。

そして、ローカルのメンバーを補強し、最後の頃は英語と中国語と日本語でやり取りするデザインチームMTGを、ワイワイバタバタながらも楽しい学祭前夜感を維持しながらリードくれた順子さんの胆力に脱帽するばかりでした。信念と意志の前において、言語はただのツールでしかないんだなと思い知った体験でした。傍で目撃できて光栄でした。

さらに、メンバーに恵まれた幸運に感謝します。

とても忙しい合間をぬって、素敵なグランドデザインを出してくれてベンダーとのやり取りもしてくれていたCorey。
最初からチームに入っていてくれたら私が入らなくても良かったのではと思うほどの八面六臂の活躍をしながら冗談も欠かさないSpencer。
とてもとてもとても信じられないぐらいに優しくチャーミングな二人に常に助けられながらのMTGでした。

Communicationチームと掛け持ちながらも、作ってくれたものが実は一番多い気がするHend。サイトデザインの長ったらしいドキュメントを読んでくれてありがとう、もっと話をしたかったなー!

HuiとChelseaとMikeは後半、ローカルから急遽入ってくれたにもかかわらず全体から飛んでくる無茶振りに応えてくれました。ほんとうに無茶振りだらけだったと思う。ありがとう。

こう書くと、はて私は何をしていたんだろうなあと思ってしまいましたが、やはりここでも大半は賑やかししかしておらず、ちょこちょこといろんな作業をさせてもらいました。
特に、SponsorチームのGreenとやり取りをして仕上げたものは、期限はギリギリだったけれど、面白かったです。

そもそも日本語であってもデザインのコミュニケーションはとても難しいので、英語になったからといってその難しさはあんまり代わり映えがしないんだな、というのも良い発見でした。

丁寧に、慎重に回数を重ねてやっていくしか、良いものは生まれない。

若い力とのContributor Day

そんな丁寧な作業をすることができたのも、やはり後半に入ってきてくれて、websiteの方をお任せすることができたCandyとRenのおかげです。

Automatticで働く若い二人の優秀さと人柄の素晴らしさに触れることができて私はちょっと泣きそうになりました。なんなら多分ほんとうに泣いてたかもしれない。若いってそれだけで力をいただける気がする。もしかして本当に生気を吸い取ってしまっていたらごめんなさいだし老害ムーブをしていなかったかも今更心配になってきたのですが、ともかく一緒に時間を過ごせて大変幸せでした。ありがとう。

そして勢いで、Wordcamp.orgへのtheme.jsonを追加するIssueに引きずり込んでしまったのですが、お陰でIssueが早めに進みそう。気になる人はこちらをチェック。

https://github.com/WordPress/wordcamp.org/issues/870#issuecomment-1994826796

WordCamp.orgをなんとかしようぜ、という会?も発足しそうなので、気になる人はSlackの#meta-wordcampをチェックしてみてね。

Yuliが最高すぎた

そんなローカルの素晴らしいメンバーを揃えてくれたのも、難しいどころ騒ぎじゃないVISAのアレコレをやってくれていたのも、そんな合間をぬって英語ができないメンバーのケアまでしてくれていたのも、Yuliでした。何もかもがYuliのおかげで今年のAsiaは回っていたといっても過言ではない。いやもちろん他のリードも懸命に頑張ってらしたのですが、彼らも彼女の素晴らしさには手放しで同意してくれるはず。

まだ小さな二人の子の母でもある彼女の、それでも全く手を抜かない真剣な姿に私は一番心打たれていました。彼女こそWCUSで出会えた素晴らしいメンバーの1人です。

Multilingual Wannabe Wannabe宣言

そうやって走りながら改善しやれることをやれる人がやれるだけやって辿り着いた当日はやはりワタワタで、もちろん沢山の良いフィードバックも悪いフィードバックも生まれたのですが、それも当日までこぎつけた皆のお陰だなあ…なんてふわふわ思いながら呑気に当日過ごしていたのは私ぐらいで、最後までみんな走り回っていました。

大きなチームなので、当日でしか話をしていないオーガナイザーも、やっと当日途中で挨拶できた人も、ついに話がまともにできなかった人もいて、それは日本のローカルのCampと変わらないとは思うのですが、控室で飛び交う言語の多様さはAsiaならではでしょう。英語のアクセントの多様さもきっとそう。

デザインチームが当日のタスクを抱えている状態というのは、ちゃんとワークできていないということでもあるので、決まったタスクが無かった(といっても結果、DAY2まで印刷機と格闘したりしていたのですがw)というのもあるのですが、無線機のやり取りを聞き取りながらその場で話している会話も聞き取るなんて離れ業は私には無理だなーと思って最初から無線機付けていませんでした。ごめんね。

時間も限られた中、指示を一つ間違えたら大事になりかねない環境で、私の適当な英語で混乱させるのが怖かったのもあります。といってもこれを書きながら、つい口出しをしてしまって混乱させたり時間ロスを招いてしまっていたような記憶がいま蘇ってきて頭をかかえているのですが…

先に書いたように言語はツールですが、必要なときに使いこなせるようにしっかり鍛えたい、新しい友人たちともっと語り合いたい、という思いが募った日々でもありました。

また会う時までに、もう少し英語と中国語を操れるようになりたいます!

AIで翻訳が可能な時代だからこそ、多様な言語の生のリソースが拾いやすい今こそ、Multilingual Wannabeには幸福な時代だと思うから。とはいえWannabeにも成れていないので、まずはMultilingual Wannabe Wannabe宣言です。

WCUSを経てのWCAという体験

WCUSで優しくしてくれたみんなに再会できたのも、とても嬉しい体験でした。WordPresserが通年WordCampを渡り歩くのもわかる気がします。そんなにたっぷり話をする時間なんてないけれど(英語力もないけれど)再会してハグできて元気だったー?て知らない土地で出来るのはなかなか嬉しい体験です。
私がハグ魔だから余計にそう思うのかもしれない。

特に、WCUSでランチで同席して話をしたアメリカ人の青年がAsiaにも来てて再会できたのは本当に嬉しかった!流石にFacebookでも交換すればよかった、と今頃後悔しています。もう一回どこかで会えるだろうか。

WordCampのセッションには確かにそこまで興味はないけれど、普段、オンラインでやり取りしている人に再会出来る場として、新しい友人に会える場として、素敵だなと思います。

ちょっとコストがかかりすぎるのが玉に瑕だけれど、またみんなに会いたいな。
そう素直に今は思います。

また会いましょう!

(セッションの感想は別記事にします!)


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